増災と減災―行き過ぎた再生可能エネルギー開発による災害への警告―
あらすじ/作品情報
【内容紹介】 良かれと思った開発や制度が、のちに大きな災いを招いてきた。本書ではそれを増災と呼ぶことにした。開発と災害は両立できないトレードオフの関係にある。開発や開発を推進するための法制度には、わかりやすい目先のメリットがある一方、災害となって後世に禍根を残し、長期にわたって人々を苦しめるデメリットがある。 一方、災害が発生することを前提に、被害を最小限に留めるための、ソフト(法制度)を中心とした施策として、減災という概念がある。 本著では現代の増災について、行き過ぎた再生可能エネルギー開発とグランピング開発という2つの増災の可能性を取り上げている。気候変動対策として我が国を含む多くの先進諸国が取り組む再生可能エネルギー開発は、行き過ぎてしまうと土砂災害に留まることなく、地域を崩壊させ、日本列島を破壊させるような大きな犠牲を伴う可能性があることを説明する。また、グランピング開発を通して、縦割り行政の弊害が大災害につながる危険性について、都道府県や市町村への許認可権限移譲の問題を含め、実例を挙げて説明する。【著者紹介】著:鈴木 猛康(すずき たけやす)山梨大学名誉教授・客員教授、特定非営利活動法人防災推進機構理事長、東京大学生産技術研究所リサーチフェロー【目次】第1章 増災とは、そして減災とは1.1 日本は自然災害多発国1.2 自然災害の素因と誘因1.3 砂防の父 ヨハネス・デ・レーケ1.4 山と海はつながっている1.5 人為的に大規模災害発生リスクを高める、それが増災1.6 社会素因を向上させること、それが減災1.7 人口増、河道の固定化1.8 近年の都市開発と増災1.9 100年間で遷都4回1.10 大阪城築城と増災1.11 製塩業と窯業の発展と増災第2章 熱海伊豆山地区の土石流災害から学ぶ2.1 土石流災害発生とその要因2.2 静岡県と熱海市の対応から表面化した大きな課題2.3 盛土規制法で課題が解決されるのか2.4 問題が山積みの盛土規制法第3章 現代の増災3.1 行き過ぎた再エネ開発と増災3.2 再生可能エネルギー開発とFIT制度3.3 令和の公害3.4 斜面の安定には地下水位の評価が欠かせない理由3.5 メガソーラーの土砂災害は熱海市土石流災害の10倍の規模3.6 新たな警戒避難体制構築の必要性3.7 避難スイッチと逃げどきチャート3.8 風力発電施設と増災3.9 森林法に基づいた審査とは3.10 再生可能エネルギーの開発が行き過ぎた場合のデメリット(増災)3.11 再生可能エネルギー開発は増災なのか第4章 行き過ぎたグランピング開発は増災―縦割り行政の弊害が増災につながる―4.1 急な斜面にグランピング4.2 土砂災害警戒区域に宿泊施設を新設4.3 建築基準法とグランピング4.4 その後の行政の対応4.5 縦割り行政の弊害として存在する縦割り法制度4.6 景観条例は機能しているのか第5章 将来に備える事前減災5.1 事前に行うから効果の大きい事前減災へ5.2 シンガポールに学ぶグリーンインフラ5.3 Eco-DRR(生態系に基づく減災)5.4 レジリエントなまちづくり第6章 増災をなくすために6.1 増災を振り返る6.2 地震予知と気候変動の類似性6.3 国土利用計画法の本来の目的とは6.4 国土利用基本法の必要性6.5 トレードオフの研究に予算を6.6 エネルギー、食料、水の安全保障も大切な減災対策第7章 気候変動と自然災害7.1 人為的な二酸化炭素排出による気候変動と増災7.2 気候変動と自然災害の関係7.3 パキスタンの洪水は気候変動のせいと言い切れるのか7.4 地球の気候変化の歴史7.5 地球の気候と太陽光7.6 地球は温暖化に向かっているか7.7 人為的な二酸化炭素排出と地球温暖化7.8 地球内での二酸化炭素の循環7.9 全球気候モデルによる気温予測7.10 地球温暖化に及ぼす自然と人間活動の影響を比較する議論7.11 SDGsの矛盾